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(暫定版)

湖北行政事務組合 湖北火葬場『湖風苑』です。
昭和15年11月、岡谷市火葬場として開設されました。
その後、平成9年度に下諏訪町が運営に加わり、湖北行政事務組合湖北火葬場となりました。
旧火葬場は、建築当時のままの姿ながら美しい姿を平成の世まで残しました。
日本一美しい火葬場だったと言っても過言ではないと思います。
戦前から使われてきた火葬場は、新しく改築され平成21年10月23日に供用開始の運びとなります。

ここの写真を撮るには、午前の早い時間帯の方が光の具合がよく、朝一番の電車で岡谷に向かいました。
着いた時は竣工式の真っ最中でした。

壁面は木目調のルーバーを多用し、木のイメージを強調させて落ち着いた雰囲気を出しています。
このルーバー、木粉の成形材で出来ています。
その原材料は、なんと、旧火葬場で使われていた木材を使っています。
他にも、庭園には旧火葬場の瓦が使われています。
瓦のカーブが、風に揺れる諏訪湖のさざ波を連想させます。
湖風苑、まさに名称通り。
まだ未完成ですが、完成が楽しみです。
多くの先祖を見送り、そして何時か自分も見送られる。
先祖を見送った火葬場が解体され新しくなっても、その古い火葬場が新火葬場の一部として、これからも地域の方々を静かに見送ります。
約70年もの間見送り、そしてこれから数十年に亘り・・・
歴史ある美しい火葬場が、このような形で残される事は、大変素晴らしい事です。
個人的にも凄くうれしいです。

館内の案内図です。
シンプルな造りです。

入るとエントランスホールがあります。
かなり広めの空間です。

更に進むと告別室。
告別室となっていますが、4炉を2室に分けた炉前ホールのような感じです。
2炉1炉前にしている火葬場では、炉前で収骨を行う所もあります。
その日の使用状況によっては、ここで収骨を行うのも良いかなとも思います。

火葬中は、無料で使用出来る待合室で待ちます。
洋室が2室、和室が1室。

程よい広さの待合ロビー。
中庭には水盤があり、これは冬季でも凍らないような作りになっているそうです。
ここは比較的小規模な施設で、受付、火葬、待合、清掃、冬場なら除雪、などの業務を専門の職員を配置するのではなく、数人で各種業務を行うのだと思います。
小規模と言っても各所は独立し職員同士の連絡方法が確保されている方が、職員同士の連携をとり易く効率の良い仕事が出来ます。
構内無線LANや構内PHSシステムで、何処に居ても内線や外線の通話が出来る火葬場も見受けられます。
ここではアンテナを見ませんでしたので、無いのかも知れません。
ちょっと気になりました。

収骨室は、収骨前室ホールを挟んで2室あります。

通路の壁はコンクリートの打ちっぱなし。
木製のコンクリートの型枠を使い造ったのだと思いますが、木目がが浮き出た美しい模様です。

帰りは入口とは別に出口があります。

火葬機器類の配置は、火葬炉の後ろに集塵機などの補機類があります。
周辺の景観に配慮し建物高さを抑えるためです。
奥からバグフィルター、ダイオキシン類処理の触媒装置、誘引排風機が見えています。
独立した触媒塔は、大都市の火葬場以外ではあまり見ません。
バグフィルターも、ろ布の交換が側面から行うタイプのものです。
普通は上部から交換するタイプが多く、バグフィルター上部には交換の為のスペースが必要です。
側面から交換するタイプだと、上面のスペースは不要になり建物高さを抑える事が出来ます。
機器の平面配置と併せ、通常の火葬場よりは、かなり高さが抑えられています。
ここの排ガス処理装置は、最高度の部類のものだと思います。(値段も高いでしょう)
住宅密集地という訳ではないので、本当はここまでは必要ないのかも知れません。
しかしこれは、建物高さを抑えた平面配置と併せ、周辺住民に対する姿勢の表れだと理解して良いのではないかと思います。

日も傾いて来ました。
土手のヒマラヤ杉の影が夕日に映えます。
旧施設からの改築で、スペースに余裕が無いだろうと思っていましたが、必要な部分には十分なスペースが確保されていました。
敷地に余裕が少ないせいか、無駄なスペースも無く、やたら長距離を歩かされるという事もありません。
新火葬場は完成しましたが、仮設炉解体や駐車場整備といった工事は途中です。
全ての工事が完了した頃には、どんな風景になっているのか、楽しみです。
改築工事着手前から一年余り追って来ました。
多くの方々のご協力があって出来た事です。
本当にありがとうございました。
まだ改築事業は完了していませんので、まだご迷惑をおかけするかも知れませんが(アセ)
湖北火葬場 仮設炉

工事期間中は仮設の火葬場を建て業務を行っていました。
仮施設ですので、省みられる事も無く忘れ去られる運命かも知れません。
炉数は2基、必要最小限の小さな火葬場です。
手狭ではありますし炉数も少ないです。
限られた土地スペースに約1年間のみの使用です。
炉数を増やし、もう立派にした方が良かったと思われるかも知れません。
でもそれには高額なお金がかかります。
税金の使い道としては、これで正しいのではないかと思います。
少々の不便は承知の上でギリギリの選択、見事なバランス感覚です。

旧火葬場から移された看板。
随分と色褪せてしまいました。
渡り廊下は、素朴で単純な造りで暖かい雰囲気を醸し出しています。
良い感じです。

火葬棟の炉前です。
扉を開けると火葬炉が鎮座しています。
この写真を撮影した頃は、まだ新品の頃でした。
その後1年ほど使われ、近隣の火葬場が使用不能という事態に陥り、最大火葬能力である1日6件の範囲で受け入れてきました。
前室無し台車式で、常時1炉3回転させるのは過酷な運用です。
当初想定した火葬件数より大幅な火葬数をこなしましたが、立派に役目を果たしました。

こちらは待合室。
こちらも必要最小限の広さと設備です。
流し台との仕切りは、旧火葬場の待合室で使われていた物を流用したものです。
細々とした備品は、旧火葬場からの流用品も結構ありました。

待合室の前から見た新火葬場。
ほんと目の前に新火葬場があります。
駐車場は、マイクロバスがUターンするだけの広さしかありません。
ここを利用する方々は、
待合室で待つ方、表に出て待つ方、炉前でお手隙の職員さんとお話ししながら待つ方、様々なスタイルで時間を過ごされていました。
手狭なのが幸いしたのか(?)アットホームな感じです。
最近の火葬場は広くて立派な所ばかりです。
これを見て、狭いながらも良い火葬場も出来るのではないかとふと思いました。

1年余りに渡って使われ、予想外の出来事により一時的にではりますが諏訪地方の火葬を一手に引き受けてきた、湖北火葬場仮施設。
「仮」という名目の施設でありますが、自信と誇りに満ちて輝いているように見えます。
お疲れ様でした。
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